シングルスピードバイクとピストバイクは広義では同じですが、正確には定義の異なる自転車です。
シングルスピードは「変速機のない自転車」のことです。
前後一枚ずつのスプロケット(歯車)をチェーンでつなぐだけのシンプルな構造で、クロスバイクやマウンテンバイクのように路面状況や傾斜によってギア比を変えることができません。
常に一定のギア比で走るため、主に筋力・持久力向上のトレーニングやトラック競技などの自転車で用いられます。一般的なサイクリストが、街乗りやロングツーリングを楽しむ状況では不向きな自転車と言えるでしょう。
ピストバイクは「シングルスピードの中でも固定ギアの自転車」のことです。
シングルスピードバイクは、フリーホイールギア付きの自転車と固定ギア付きの自転車に分かれ、後者の固定ギア付きの自転車を「ピストバイク(トラックレーサーバイク)」と呼びます。
よくフリーホイールギア付きをシングルスピード、固定ギア付きをピストバイクと分ける表現を目にしますが、正確に言えば「シングルスピードの中でも固定ギアの自転車をピストバイク」と言います。
固定ギアのピストバイクは、ペダルを漕ぐのをやめても自転車が惰性で走っている状態ではペダルが回り続けます。
また、基本的にブレーキがないため、惰性で止まるかクランクを逆回転させて止める以外に方法がありません。
ブレーキを有するモデルもあり、カスタムで取り付けることも可能ですが、フリーホイールギアの自転車よりもブレーキの効きは格段に落ちるため、街乗りで乗るには危険を伴う自転車です。
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シングルスピードのメリット
街乗りやロングライドには不向きなシングルスピードとピストバイクですが、メリットもあります。
ます変速機がなく構造がシンプルになるため、軽量・頑丈です。
一枚ずつのスプロケットにチェーンのみという、余分なものを一切排除したシンプルなフォルムは、ロードバイクなど競技自転車に乗るサイクリストにとっては憧れのようなものもあるでしょう。
変速ができないため、ギア比のセッティングが重要になります。
ギア比とは、チェーンリング(クランク側)の歯数とコグ(リアタイヤ側)の歯数の比率で
ギア比=チェーンリング歯数÷コグ歯数
で表されます。
例えばチェーンリングの歯数が46Tで、コグの歯数が16Tの場合、ギア比は2.88となり、クランクを1回転させると後輪が2.88回転するという意味です。
ケイデンスが同じであれば、このギア比が大きくなるほど速く走れることになりますが、大きいギア比を回すためには相応の筋力・持久力も必要となるため、自分に最適なギア比を見つける必要があります。
この「自分に最適なギア比を見つけること」「状況に合わせたギア比のセッティングをすること」がシングルスピードの楽しみとも言えるでしょう。
ピストバイクのメリット
固定ギアを有するピストバイクは、スピードを制御するために、惰性をコントロールするか、クランクを逆に回して制御する必要があるため、スピードの扱いが難しいです。
一方、ペダルを踏み込んだ時の感覚は最高の一言。
私も一度だけピストバイクに乗ったことがあるのですが、ぺダリングしたときのロスの少ない制動と、ぺダリングから生まれた推進力がダイレクトに自転車に伝わる感覚は、フリーホイールギアとは全く違うため、何度も味わいたくなる感覚です。
デザインや推進力に一切無駄のない設計は、自転車の究極形とも言えると思います。
ピストバイクの是非
ピストバイクについては、何年か前からマスコミでも取り上げられるようになり、かなり有名になりましたね。但し、悪いイメージで有名になってしまいましたけど・・・
車や人通りの多い公道で、ピストバイクとの衝突などによる事故が多発し、ついに警察が取り締まる程の事態にまで発展しました。
自転車に詳しくない人には「ブレーキのない自転車=ピストバイク=危険」という間違った悪いイメージがついてしまい、個人的には残念でなりません。
ここで批判を恐れずハッキリといいますが、ピストバイクを車や人通りの多い公道で走る人はアホ以外の何者でもありません。自転車に乗る資格なしと断言します。
どんなに自転車歴があろうが、ライディング技術があろうが、そのようなマナー違反を犯し、自転車の究極形ともいえるピストバイクのイメージを落としたことは愚の骨頂です。
未だにブレーキなしのピストバイクで走っている人がいると聞きます。
周りの安全のためにも、ピストバイクの世間的なイメージのためにも、自転車業界全般のためにも、すぐに自転車を降りて二度と乗らないで欲しいですね。